ジェノタイピング(genotyping)などの操作を行う際にゲノムDNAの抽出作業が必要になります。
proteinase K(proK, wikipedia)で一晩とかした後、
フェノール・クロロホルム(フェノクロ精製)を用いてDNA精製をする方が一番スタンダードな抽出方法ではないでしょうか?
しかしながら、実験の都合上もっと素早くDNAを抽出してgenotypingを行うこともあります。
もしくは、大量のgenotypingを余儀なくされている研究者の方にとっても、
フェノクロ精製は時間がかかってしまいます。
金銭的に余裕のある研究室や共同研などの外部施設が充実してい場合ですと、DNA自動分離装置(クラボウ)などの機械が出ておりますが、根本的な解決には至っておりません。
今回、紹介するのは非常に素早くDNAを抽出でき、しかもローコストなメソッドです。
ですが、完全にキレイなDNAを抽出できるわけでなく、参考文献によると”汚い”DNA精製となっております。
普段、genotypingを行っている方は是非一度試してみてはいかがでしょうか?
[Materials]
・ Alkaline Lysis Reagent (アルカリ溶解液, 25mM NaOH / 0.2 mM EDTA溶液(pH12.0))
・ Neutralization Reagent (中和液, 40 mM Tris HCl (pH 5.0))
Alkaline Lysis Reagentの調整* | ||
試薬もしくは溶液 | 使用量(50 mL) | 最終濃度 |
10N NaOH | 125 µl | 25 mM |
0.5 M EDTA | 20 µl | 0.2 mM |
水 | 50 mlになるよう調整 |
*pHの調整は不要です。
Neutralization Reagentの調整 | ||
試薬もしくは溶液 | 使用量(50 mL) | 最終濃度 |
1 M Tris-HCl(pH5.0) | 2 ml | 40 mM |
水 | 48 ml | 0.2 mM |
*TrisのpHが低めの理由はAlkaline Lysis ReagentのpHが以上に高い為、mixした際に丁度よくなるようにしてあると考えられます。
[Method]
1. 1 mm-2 mmの長さのマウスのtail(尻尾)もしくはgenotypingを行いたい組織をチューブに入れる。
2. 75 µlのAlkaline Lysis Reagentを加えてtailが完全に液に使っているのを確認する。
3. ホットスターラーにて95℃で1時間。その後、次のステップに進むまでに4℃で保存する。
4. 75 µlのNeutralization Reagentを加え、ボルテックスなどでよく混ぜる。
5. 必要があれば遠心を行い、上清を回収する(しなくても問題ありません)。
6. 2 µlほどとってPCRに使用する。
私が実際に実験を行う際には、tailを使わずに指を使用しておりますが、問題なく使用できています。
参考文献に挙げさせていただいたUCのサイトによると、週齢が 6週を越えている場合は2時間以上95℃で置いた方がよい結果がでているそうです。
DNAの精製度でいえば非常に汚いと言わざるをえないので、期待しているgenotypingの結果が出ない際には、使用しているPCR酵素をよりよいものにするか、もしくは加えるDNAテンプレートのvolumeを変更するなど、してみてください。
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参考文献
・ G.E. Truett, et al, BioTechniques 29:52-54, July 2000, PMID:10907076
・ DNA isolation protocols (The Jackson Laboratory)
・ DNA preparation Techniques (Trasgenic Mouse Facility, University of California Irvine)