アンピシリン溶液の調整と歴史

アンピシリンはβ-ラクタム系抗生物質に分類されます。

β-ラクタム系抗生物質は一様にして以下のようなβ-ラクタム構造(四員環ラクタム環)を持っています。

つまりカルボキシル基とアミノ基が脱水縮合した上で環を作っています。


β-ラクタム(wikipediaより転載)

β-ラクタム系抗生物質で有名なペニシリンにも当然のことながらことながら入っています。


ペニシリン(wikipediaより転載)

わかりますでしょうか?

β-ラクタム環の横にはアシルアミノ基が結合しており、

このアシルアミノ側鎖を変化させることで、

様々な生物活性を持ったペニシリンの類縁体を作製することができます。


ペニシリン(wikipediaより転載、編集)

そして、アンピシリンがこちらになります。


アンピシリン(wikipediaより転載、編集)

アミノ基が追加されています。

このアミノ基が追加されたことで、

グラム陰性菌の外膜(細胞壁)を通過できるようになったのです。

こうして、ペニシリンが元々効果をもっていたグラム陽性菌だけでなく、

グラム陰性菌にもある程度は有効になりました。

もちろん全てではなく効果のない菌もいます。有名なものですと緑膿菌が挙げられます。

実験においてアンピシリンが大変使われるのは、

グラム陰性菌である大腸菌に有効で、

セレクションに使えることが大きいでしょう。

今回は、そのアンピシリン溶液の作製方法を紹介します。

[Materials]

・アンピシリンナトリウム塩(Ampicillin sodium salt)

・蒸留水もしくは20%EtOH溶液(蒸留水に溶かす)*

*20%EtOH溶液を使用した場合、-20℃でのストックをしていた場合に溶けるのが早い。基本的には蒸留水で十分。

[Method]

1. アンピシリンナトリウム塩を蒸留水に 50 mg/mL の濃度に溶かす。

2. 0.22 μm のフィルターを用いて滅菌する。**

3. 1 mlずつバイアルに分注し、ストック溶液として-20℃で保存可能。

4. 大腸菌のセレクションには50 μg/mL(最終濃度)***で使用する。

**無菌的に操作ができるのであれば、フィルターを省くことも可能。

*** 文献によっては20~100 μg/mLと大きく差があり、はっきりと決まった濃度があるわけではない。

関連記事

抗生物質のストック濃度と使用濃度の一覧表

参考文献

アンピシリン, BioWiki
Wikipedia contributors. “アンピシリン.” Wikipedia. Wikipedia, 25 Sep. 2011. Web. 19 Aug. 2012.
じっけんレシピ(PDF)SIGMA-ALDRICH
Wikipedia contributors. “ペニシリン.” Wikipedia. Wikipedia, 29 Jun. 2012. Web. 19 Aug. 2012.
Wikipedia contributors. “Β-ラクタム系抗生物質.” Wikipedia. Wikipedia, 29 Jun. 2012. Web. 19 Aug. 2012.
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マクマリー,John McMurry,伊東 〓,児玉 三明,荻野 敏夫,深澤 義正,通 元夫東京化学同人

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*本記事の作製にあたっては第六版を参考にしている

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