細胞を扱う方々の多くは培地を作製した際に血清を加える必要があります。
血清を加えないと大体の動物細胞は生育ができません。
これは血清中に含まれるホルモンの供給源として、
培地の緩衝作用の増強、
フェノールレッドや 各種プロテアーゼからの保護効果があります。
しかしながら、その一方で未知の物質が多く血清の代わりとなる物質が見つかっていないため、仕方なく血清を使っているのです。
血清の多くは市販されておりFBS(ウシ胎児血清)、NBS(新生児牛血清)などが挙げられます。
値段は大分高いので、わからずに使っている方は調べてみてください。
血清の選び方などはまたそのうちに書こうと思います。
血清は多くの場合滅菌済みになっています。
血清を実験操作の都合上、改めて滅菌する必要などがある場合は、0.45 µm か0.22 µmのfilterで滅菌しましょう。
さらに、滅菌済をした上で、
実際に実験を行う前には血清の非働化をする場合があります。
非働化の必要性に関しては諸説ありますが、
まずは、そのプロトコールを以下に示します。
[Method]
1. 凍った血清を溶かす(常温、いそぎの場合は恒温槽中にて)
2. 恒温槽の温度を56℃に設定し、水温が56℃になるのを待つ。
3. 血清中の氷が溶けきっていること、水温が56℃になっているのを確認。
4. 56℃*にて、血清がつかりきった状態で30分間放置する。
5. できあがったら、非働化した日にちを書き込み、分注する。
なぜ、このような操作が必要なのかというと、血清中に含まれる補体に答えがあります。
補体は、免疫系において抗体が認識したものを最終的に破壊する役割をもっています。
補体の働きは主に三つに分けられます。
・伝達物質を産生し、マクロファージなどの炎症系の細胞の活性化
・抗原のオプソニン化
・膜障害性複合体(MAC)を形成し、細胞溶解をする
こうした反応を引き起こす為には補体系における二つの異なる経路にて活性化されます。
それが古典的経路と第二経路です。
上記の図(wikipediaより転載)をみていただくと左側が古典的経路、右側が第二経路となっております。
古典的経路では病原菌などの表面タンパクに抗体が結合し、補体の一成分が結合する事で活性化 されます。
第二経路では病原菌自体がC3a,C3bを活性化し古典的経路にはいっていきます。
結果、補体は膜障害性複合体を形成し、細胞膜に穴をあけて破壊し、 病原菌などを排除します。
私たちの体を健康に維持するためにはなくてはならない働きですが、細胞障害性などがあるため、in vitroにて細胞を飼う際には問題になることがあります。
特に、内皮細胞や血球系細胞では血清の非働化は必要であるという記述をみうけます。
56℃にて血清を温めてやると、古典的経路のC1qの不活性化と第二経路のBbを不活性化することが知られており、こうすることで補体系の機能自体を阻止し、実験を行えるようにしています。また、56℃という温度は血清中に含まれる各種血清成分(成長因子)などの不活性か引き起こさないとされています。
さて、ここまで血清の非働化について説明をしてまいりましたが、一方で非働化など必要ないという考えがあるのも事実です。
ご自身のラボの方針や考え方に従ってどのようにするか決めていただけたら良いと思います。
参考文献
・ | 補体. (2011, December 19). In Wikipedia. Retrieved 12:18, January 29, 2012 | ||
・ | 細胞.jp 細胞培養基礎講座 | ||
・ | よくある質問 セルバンク | ||
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