超解像度顕微鏡のあれこれ〜SIM, STED, PALMの分解能の違いは何?〜

生物学者が扱えるような超解像度顕微鏡がデビューしたのは少し以前の話になります。

しかしながら、デビューしても扱う機会は大変少なかったのではないでしょうか。

多少なりとも時間が過ぎた、まさに今、だんだんと使用者が増えているように感じます。

簡単にですが、

これら超解像度顕微鏡がそれぞれどのような空間分解能をもっているか。

紹介にあたっては、2010年にJCBにて以前出ていたReviewのFigが大変わかりやすいので、簡単に紹介したいと思います。

では、早速、下の図を見てみましょう。


JCBより転載

CLSM(confocal laser scanning microscopy)は共焦点レーザー走査型顕微鏡 (共焦点顕微鏡, wikipedia)です。

CLSMはピンホールを利用することで、焦点面以外からくる余分な光(つまりボケ)を取り除くことができます。

超解像度顕微鏡が出る以前は共焦点顕微鏡が光学系の顕微鏡では最高峰の一つでした。

上記にある通り、XY軸で180-250 nm, Z軸方向には500-700nmの分解能を示しています。

これ以上によい分解能を得るには、

光をあきらめ、電子線をつかう必要、つまり電子顕微鏡レベルにしないといけませんでした。

しかし、電子顕微鏡では、

生細胞のイメージングができない、

多重染色ができない、

といった諸問題もあります。

こうした背景から光学系でありながら光学限界を超える技術。

つまり超解像度顕微鏡がもとめられていました。

こうした問題を解決するために開発されているのが、

SIM, STED, PALMなどです。


JCBより転載

今回はそれぞれの原理はさておき、

分解能に関してのみ紹介します。

CLSM(共焦点顕微鏡)を基準に図が書いてあります。

STED(Stimulated emission depletion)はXY軸平面の解像度が飛躍的に向上していますが、Z軸は変わりません。

これは観察用の励起光とは別にドーナッツ状の短パルスのレーザー光(STED光)を被せることで実現しています。

ライブイメージングも可能ですが、現段階では二色までしか出ていません。

それ以外に関してはCLSMと同様に扱えるので、大変扱いやすいと考えられます。

SIM(Structured illumination microscopy)は全体的に解像度が向上していますがSTEDよりXY軸平面はよくありません。

またモアレ効果を利用するため一つの画像あたり数枚の撮影があるため、短時間のライブイメージングには適さないと思われます。

撮影後の画像の合成(SIM化)を必要とするため、撮影後の処理に時間がかかります。

PALM(Photoactivated localization microscopy)は圧倒的な分解能を示していますが、

エバネッセント光を利用する性質上、カバーガラスからZ軸にて140 nm前後までしか使えません。

分子が一つずつ光ったものを記録していくという性質上、撮影時間がかかるのが難点でしょうか。

経過観察には適しているとは思えません。

原理を含めそれぞれの解説は時間のあるときにと思っています。

ですが、

まずどの程度の空間分解能が得られるのか。

これを理解する必要があるでしょう。

空間分解能が把握できれば、自ずと実験に必要とされる顕微鏡がわかると思います。

現段階ではどれも一長一短であり、

やはりオールマイティな顕微鏡としては共焦点顕微鏡が優位であるのは間違いありません。

詳しく知りたい方は、

私がいつか解説するよりもこの図を記載しているReviewをすぐ読んでいただくか、

それぞれネットで調べていただければいいと思います。

おまけ

基礎知識として、

顕微鏡だけでなくカメラなどもしかりですが、

1点から出た光は1点に結合するわけではなく、

ある程度の広がり(PSF, point spread function, wikipedia)を持っています。


wikipediaより転載

よって上記の図の左上のように像があっても、

PSFによって、実際に得られるのは右側のような少し広がりを持った画像になります。

これはどの光学顕微鏡でも抱えている問題です。

もちろん共焦点顕微鏡についても同様でピンホールだけでは解決しきれていません。

(ボケの取り方としてはデコンボリューション使うデルビも挙げられますが今回は割愛いたします。)

こうした問題点をクリアするために日々技術革新はすすんでいるのです。

参考文献

Schermelleh L, Heintzmann R, Leonhardt H., A guide to super-resolution fluorescence microscopy, J Cell Biol. 2010 Jul 26;190(2):165-75.
 Wikipedia contributors. “共焦点レーザー顕微鏡.” Wikipedia. Wikipedia, 1 Jun. 2012. Web. 17 Jul. 2012.
講義と実習生細胞蛍光イメージング―阪大・北大顕微鏡コースブック 講義と実習生細胞蛍光イメージング―阪大・北大顕微鏡コースブック
原口 徳子,平岡 泰,木村 宏共立出版

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