1 M Tris-HCl 溶液(pH 8.0)の調整


トリスヒドロキシメチルアミノメタン(wikipediaより転載)

今回紹介するのはトリス塩酸バッファーの作り方になります。

使用頻度の高い溶液は作っておいたほうが便利です。

Trisの正式名称はトリスヒドロキシメチルアミノメタン(tris(hydroxymethyl)aminomethane、THAM:wikipedia)と呼ばれています。
このTris-HCl bufferがよく生命科学系でよく使われる理由は簡単で、安価で且つ、緩衝液のpHの適応範囲がおおよそ7〜9ぐらいと実験 に適しているためです。

しかしながら、wikipediaにも書いてある通り、一級アミンがタンパク質と反応することや、哺乳細胞に対する毒性などがあります。

そのため、必要に応じてHEPES(pH6.8-8.2)などのほうが便利だったりもします。
HEPESを含むGood buffer(wikipedia)は知っておいて 損はないでしょう。

[Materials]

1 M Tris-HCl(pH8.0)の調整
試薬もしくは溶液 使用量(1 L) 最終濃度
Tris aminomethane
(分子量121.2)
121.1 g 1 M
6N HCl溶液(塩酸) およそ100 ml
1N HCl溶液(塩酸) 適量

[Method]

1.  Trisの粉末を水800mlに溶かす。

2.  塩酸を加えてpHが8.0になるように調整する。

3. 一度、pHが8.0になった後、溶液が冷めるのを待つ。

4. 塩酸を加えてpHが8.0になるよう最終調整を行う。(TrisのpHは温度依存的に変化するため)

5. 液量が1 Lになるまでメスアップ

6. オートクレーブする

7.  常温もしくは4℃にて保存する。

pHについて今回は使用頻度の高いと思われるpH8.0を紹介しましたが、実験系によっては他のpHも作製しておいたほうが楽かもしれません。
そのときは塩酸の量を調節してください。また塩酸を加える際に少し熱がでますが、上記の濃度であればまず問題ありません。

ーーーーーーーーーー

記事の改訂(2013/1/1)

変更前:密栓してオートクレーブ
変更後:オートクレブする

参考文献として紹介しているバイオ調整マニュアル(2008年 第六刷)では塩酸の揮発を防ぐために密栓してオートクレーブが推奨されていました。通常のガラスビンは密栓してオートクレーブ不可ですが、デュランビンなど強度の高いものを利用すれば可能であるとの記述でした。しかしながら、メーカー問い合わせのところ、どのガラスビンにしても密栓してオートクレーブは推奨していないとのことでしたので、上記の記述を変更致しました。また、今回はTrisのpH調整についても少し書き足しました。

ーーーーーーーーーー

関連記事

・ TAE緩衝液 (50 x TAE buffer)
・ TE 溶液の調整

参考文献

Wikipedia contributors. “トリスヒドロキシメチルアミノメタン.” Wikipedia. Wikipedia, 16 Nov. 2011. Web. 3 Mar. 2012.
Wikipedia contributors. “HEPES.” Wikipedia. Wikipedia, 3 May. 2011. Web. 3 Mar. 2012.
Wikipedia contributors. “グッドバッファー.” Wikipedia. Wikipedia, 20 Apr. 2011. Web. 3 Mar. 2012.
バイオ試薬調製ポケットマニュアル―欲しい溶液・試薬がすぐつくれるデータと基本操作 バイオ試薬調製ポケットマニュアル―欲しい溶液・試薬がすぐつくれるデータと基本操作
田村 隆明羊土社
Amazonで詳しく見る
 ・
バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ) バイオ実験イラストレイテッド〈1〉分子生物学実験の基礎 (細胞工学別冊 目で見る実験ノートシリーズ)
中山 広樹,西方 敬人
秀潤社Amazonで詳しく見る
スポンサーリンク
  

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする